ミステリ書評&水草水槽


by abchawaii
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カテゴリ:お勧めミステリ本( 8 )

焦熱の裁き

d0000602_0551530.jpg「焦熱の裁き」
(デイヴィッド・L.ロビンズ著/村上 和久・訳/新潮文庫/税込980円)


一般的な常識の範疇で言えばそれほど悪い人間が出てくるわけではないのに、悲劇が起こってしまう。。。そんな話です。過去ではなく現代でも続く根深い黒人差別の現実が描かれてるというか。

単一民族で構成された私たち日本人には理解しきれない「真のアメリカ」を見た、という印象が強いですね。
もちろん、これがアメリカ社会のすべてではありませんが、安易で軽快なハリウッド映画等を見慣れてる私たちにとって衝撃的な小説であることは間違いありません。

ある、重要な意味を持つ火災現場から思いもよらぬ遺体が発見され話は進むのですが、基本はリーガルサスペンスです。ひとりひとりの人間が描かれている奥の深い心理ドラマなので、ささっと読んでしまうよりも、映画としてじっくり俳優の演技を楽しみ、登場人物それぞれの心の動きを見てみたいな、と感じました。
思った以上に深いテーマが存在する読み応えあり、の一冊です。
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by abchawaii | 2005-03-19 00:56 | お勧めミステリ本

「歌う白骨」

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「歌う白骨」
(オースチン・フリーマン著/大久保康雄・訳/嶋中書店【嶋中文庫―グレート・ミステリーズ〈6〉】/税込660円)

今ではすっかり認知されているミステリの手法・倒叙推理(前半で読者にあらかじめ犯行・犯人を明かした上で、それを知らない第三者・主人公等が犯人を突き詰めていく形式)を世界で初めて確立したのが、このオースチン・フリーマンの「歌う白骨」だと言われています。原本初版は1912年!!・・・生まれてません^^

本書は表題作を含む主人公ソーンダイク博士による数々の事件を収めた短編集なのですが、パターンとしてはホームズ役のソーンダイク博士が、当時の最先端・科学的捜査法によって謎の解明に挑むというシリーズものになっています。

文体や書き方は異なりますが基本的にはホームズに似たパターンで、「ではホームズかソーンダイクか?」と言われれば・・・間違いなくホームズを推しますけど・・・でも、ソーンダイク博士の存在もあなどれないな~と思う今日この頃。。。

「歌う白骨」は、あまりにも有名でミステリファンなら知らない人はいないのではないかと思います。でも全集に入ってたり、といささか敷居が高く、一冊も持っていなかったのですが、昨年末復刻版として嶋中書店が発行し、私も気兼ねなく660円で入手することができましたw

余談ですが、嶋中書店は「海外名作ミステリーを網羅する文庫版全集~“グレート・ミステリーズ”」というシリーズを作っており、この他にもポーやドイル、ヴァンダインなどなど貴重な名作を順番に文庫化していますので、↓のページ要チェックです。

嶋中書店のグレート・ミステリーズのページ
http://shimanaka-shoten.co.jp/bunko02.html
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by abchawaii | 2005-03-16 21:55 | お勧めミステリ本

「ボトムズ」

d0000602_3323742.jpg「ボトムズ」
(ジョー・R・ランズデール・著/北野寿美枝・訳/早川書房・ハヤカワ・ミステリ文庫/861円)



吉報ですよ~!!
ランズデールの「ボトムズ」の文庫が出ましたよ~!!

単行本は高いよ~っと購入を見送ったアナタ。まだ読んでないアナタ。ハヤカワの文庫コーナーを探してみてくださいね~

とにかく訳文がいいのかな? 海外モノの中ではめずらしく!!読みやすいです。
至る所でベストテン入りしたので、いまさらあらすじを紹介するのは気が引けますが、「2001年度アメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞ほか4部門を独占した1冊」と言えば、おわかりいただけるでしょう。。。
とにかく前半の森でのシーン。幼い兄弟が手をつなぎ合って森から抜け出そうと急ぐシーンは本当にすばらしいです。
私はこの一冊ですっかりランズデールファンになってしまいました。
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by abchawaii | 2005-03-11 03:33 | お勧めミステリ本

「黒と青」

d0000602_1211944.jpg「黒と青」
(アナ・クィンドレン・著/相原真理子・訳/集英社/2205円)



書店で何気なく手に取り、本を開き、この作品の冒頭一行目の文章を目にした瞬間、なぜか「しまった、やられたっ!!」と感じたのを覚えています。というのは、この本は(内容はともかく)書き出しの一行ですべてを物語っていたからです。前評判も前知識もなく、直感だけを頼りにその場で即購入を決めさせるだけの衝撃が、そこにあったからです。


「はじめて夫に殴られたのは十九のときだった。」
これが、冒頭、書き出しの第一行目です。この一文が、この本のすべてを語っています。


話としてはドメスッティックバイオレンスを下敷きとしたフランス・ミステリで、主な登場人物は妻である主人公の女性と息子、そして暴力を振るう側の夫の3人。秘められたテーマは―――それぞれのモラル、それぞれの正義―――といったところでしょうか。世に出にくい家庭内暴力という社会の問題を、うわべのイメージで取り繕うのではなく、真っ向から直視した作品とも言えます。
【暴力夫? 別れればいいじゃん、私だったら即離婚だね~夫は逮捕させればいいんだよ逮捕!!】というように、他人事でしか物事を判断できない大多数の我々一般人には理解できない善悪・家族・親子の何たるかが、この本には詰まっています。

後々調べてわかったのですが、著者はピューリッツアー賞受賞者で、出版当時は全米で話題を呼びベストセラーになったとか。視点が鋭く、また、あいまいな常識をだらだらと書き並べないあたり等、さすがとしか言いようがありません。訳文も読みやすく、女性だけでなく男性にも読んで欲しい一冊です。ラストではわが身のモラルを問わざるを得なくなるような衝撃的なカウンターパンチもちゃんと用意されていますので、ご心配なく。

そうそう、表紙の絵がちょっと怖いのですが・・…まあ、その辺はカバー外すとか、ブックカバーをつけるなど御好みでご対処下さい~
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by abchawaii | 2005-03-11 01:21 | お勧めミステリ本

「赤道」

d0000602_1102169.jpg「赤道」
(明野照葉・著/光文社文庫/600円)



作者は、初期の松本清張賞の出身です。松清賞受賞作も非常に巧かったのですが、何よりこの「赤道」でさらに巧くなったという印象が強いです。一気読みできます。

国内ミステリファンなら、この作者と作品群は、読んでおいたほうがいいかもしれません。というのは、第二、第三の東野圭吾・宮部みゆき的要素を持った作家だからです。東野圭吾も宮部みゆきも、ブレイクするまで10年くらいかかってるわけですが、つまり―――彼女・明野照葉さんは今まさにその渦中にあるような気がしてならないのです。作品数が少ないせいか、メジャーなベストテンとかにはあまり出てこないので、名前すら知らない方も多いでしょう。でも、国内ミステリを書く女性作家としては、内々でかなり有望株、成長株です。ぜひお見知りおきを。

彼女の作品の中でも一押し、この「赤道」の舞台はバンコクです。怠惰と無気力が充満し、暑さと湿気で汗が噴出してやまないバンコクの裏路地で、日本にも帰れずバンコクでも居場所を失いつつある日本人が主人公です。売春斡旋、転生ビジネスなど、現代のバンコク裏社会にどっぷりハマッて抜け出せなくなった若者の話。サスペンスタッチな犯罪小説、という感じで、事件、暴力、謎などもりだくさんです。文章も読みやすく、構成もよくできているので特に後半からラスト、読後の満足感が高かったな~。

文庫になった今が一番の買い時かもしれませんね。
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by abchawaii | 2005-03-11 01:10 | お勧めミステリ本

「隣の家の少女」

d0000602_17163.jpg「隣の家の少女」
(ジャック・ケッチャム著/金子浩訳/扶桑社ミステリー/720円)



この小説はタダモノではありません。表向き、かなりエグイです。痛いです。ハッピーエンドを好む方は読まないで下さい。なのであまり人にはお勧めできません(爆)。

あらすじは、虐待されている隣の家の少女をのぞく少年の話、というか虐待される少女の話?なのですが、最後の最後まで徹底して残酷です。だから、この本のどこがいいの?と嫌悪感しか残らない読者も多い思います。読んでいて気持ち悪くなって、途中で読むのをやめてしまう人が多いかもしれません。私も一度途中で読むのをやめようかと思ったのですが、どうしても気になって再び気を取りなおし、再チャレンジで冒頭から読み直してみました。

そうやってようやく最後まで読んでみて、やっとほんの少し、なぜこの作品がこれほどまでに【作家・書評家などのクロウト連中から】絶賛されているのかが見えてきたような気がします。

そしてたどり着いたのが、これは……タダモノではないという結論でした。ジャック・ケッチャムが、作家として選ばざるを得なかった深遠なるテーマと、衝撃的で実験的な試みの結果生まれた作品と言うか、つまりこれは「あまりにも前衛的すぎた作品」なのです……。

名作として一般社会に受け入れられるのは100年後くらいかもしれませんね。というわけで買いです。間違いなく買いです!!
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by abchawaii | 2005-03-11 01:07 | お勧めミステリ本

「著者略歴」

d0000602_102890.jpg「著者略歴」
(ジョン・コラピント・著/横山哲明・訳/ハヤカワノヴェルズ/1980円)



≪間違いなくおもしろい【大どんでん返し】ミステリーの最上位》に位置する傑作です。

あらすじは---事故死した友人の小説を勝手に自分が書いたと偽って発表したら、大ベストセラーになってしまい、やがてある人物の登場により見事な転落人生が始まる…という結構ありきたりな感じなんですけどね。でも、でも……!! おっとネタばれになるといけないのでここから先は書けません。事件が次々に起こってもうだめかとハラハラさせられて、まあ、単行本価格分のお金を払う価値はありました。
なかなか文庫にならないので・・・もしかしたら文庫化されないかも? なぜ? 文庫が出たら即買いお勧めします。

ハリウッドメジャーで映画になる話があったはずだけど、その後どうなったのかな~?
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by abchawaii | 2005-03-11 01:00 | お勧めミステリ本

「源にふれろ」

d0000602_0472376.jpg「源にふれろ」
(ケム・ナン著/大久保寛訳/早川書房ハヤカワミステリ文庫)


ここ1-2年の間で読んだ海外ミステリの中で「ベスト10入り間違いなし」の傑作です。
内容は、ひとことで言えば「胸を突く青春小説」とでもいったところでしょうか。無垢な少年が、あることをきっかけに家を出て、世間の表や裏を経験しながら前へ前へと進んでいく話です……。といっても麻薬ドラッグあり、暴力ありで、めちゃめちゃになっちゃったり(されちゃったり)。少年から大人へと変わっていく主人公の姿に「体の傷よりも心の傷のほうが痛いんだよねやっぱ」なんてセンチメンタルな気分になってしまいます。

1986年に刊行されて以降、なんと、18年も経って初めて文庫化された~というかなり特異で貴重な名作なのですが……まあ、そのおかげで私はこの本と出会うことが出来たわけで。文庫化がなかったら知らないまま一生を終えちゃうとこでしたよ早川書房さん。早川書房様。ああ、ありがたや。

昔大ブレイクした村上龍さんの「限りなく透明に近いブルー」という作品と似てるな~という印象があったので、もしかして村上龍さんってば~これパクッちゃったのかな~なんて思い、双方の出版された年月日を比べてみたら---ごめんなさい、村上龍さんのほうが先でした。。。
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by abchawaii | 2005-03-11 00:47 | お勧めミステリ本